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音も立てず、和を重んじる所作で温いお茶を口に含む祖母を祖父も父も母も、伯父もが注視した。
「受験なさいな。受かれば通いなさい。
あの学校はとても良い環境で勉学にも運動にも励む事が出来ますもの、素晴らしい学校でしょ、あなた?」
にっこりと目を細めて優しく微笑む祖母に自身の通い教える場を褒められ薦められると、祖母にベタ惚れな祖父は何も言えなくなる。
「そりゃ……ワシが教える子らは皆慎ましく清楚な子ばかりだが……」
もごもごと肯定するしかない。
家長といえど、惚れた妻には弱い。
「私は賛成ですよ」
祖母の一言によって部屋の空気は一変し、父も言いたい事はあるのだろうが困惑したまま諦めの表情となり、母は溜め息を吐いて仕方なくといった様を見せた。
「しかし……真は……」
伯父だけは納得がいかぬという顔で口ごもりつつも皆の様子を窺った。
「仕方がないよ、兄さん……」
「そうね、きっと、仕方がないのね……」
「そうです。私は気付いていましたよ……ねえ?」
反論を試みる伯父に父母は諭す言葉を吐き、宥める傍で祖母は一同に笑顔を向けた。
皆、思い当たる節があったのだし、兄の堅くなな意思を尊重しようと意見を纏めた。
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