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全5/7エピソード・完結
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「やあ、久しぶり」 その声の主を一瞥すると、女は「何か用かしら」と目を細めた。 「つれないなぁ」 「だから何の用? こっちはアナタに用はないんだけど」 読みかけの本に目を落としながら、ティーカップに注がれた紅茶を上品に啜る。 男はヤレヤレといった感じで、女の前に腰を下ろした。 「聞いたよ。犬君が眠りに落ちた時に、こっちの世界にこっそり連れて来てるらしいじゃないか」 女は不満そうに横目で男を見ながら、「そうよ、それが何? まさか、それを咎めに来たっていうの?」と、少しイラついた口調で返す。 しかし、男は両手を振って否定した。 「いやいや、それは僕の管轄外だよ。それより、いい話を持って来たんだ」 「いい話? 何それ」 頬杖をつきながら冷めた視線を男に送ると、男はフフンと鼻を鳴らした。 「ユキちゃんのね、転生の手続きをして来た。これで犬君とユキちゃんは現世でまた会えるはずさ」 それを聞いた女は目を丸くすると、「ヤーン。やれば出来るじゃない。チューしてあげる!」と身を乗り出す。 唇をタコのように尖らせる女。 それを手で制しながら男が言った。 「ただし、条件がある。なぁに、君にはどうでもいい話さ」
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