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「半分頂戴」
それが、四つ年下の妹、良子の口癖でございました。夕飯のハンバーグやバースデーケーキの苺など、良子は私の返事を待つことなく、悪びれもせずに私の皿にフォークをつき立てる子どもでした。
母は「あらあら」と目尻を下げながら「良子、だめじゃない」と注意を向けるものの、その目はいつも私に「お姉ちゃんでしょう」と語りかけていました。母は常日頃から私に信頼と期待を寄せていたのです。
良子の「半分頂戴」が始まると、母の目線はすうっと私にスライドし、唇の端を上げながら私の一挙一動を見つめます。そして私が「もう、良ちゃんったら」と笑顔で皿の中身を差し出すのを確認すると、満足そうに、大きな口を開ける良子を愛しそうに眺めます。
母は美しい人でした。
それ故に、私は母が怖くもありました。色素の薄い茶色の瞳はガラス玉のようでしたので、実は母は人形なのではないかなど、馬鹿げた妄想をくゆらせることもありました。
けれど、良子のわがままも悪いことばかりではありません。私が皿の中身を差し出せば、「お姉ちゃんは偉いわね」と、母の美しい笑顔は存分に私へと注がれます。時折良子の知らないところで「内緒よ」とクリームがたくさん乗ったケーキを出してくれることもありました。
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