姉の独白

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 成長と共に、良子の可愛らしさは凄(すご)みを帯びた美しさへと変貌していきました。薄ピンクの唇にリップを塗る仕草などは、姉の私でもドキッとすることがあるほどです。小学校卒業と共に成長をやめてしまった私の身長とは裏腹に、良子の手足はエイリアンのように年々伸びていきましたので、最早正面に立って話しかける時などは、良子を見上げなければなりません。 「半分頂戴」と私の皿に手を伸ばすことは随分前からなくなっていましたが、時折「お姉ちゃん、あれ貸して」と、私が母から譲り受けたネックレスやら本革の鞄やらを取りにくることはありました。私はその度に微笑みを浮かべて頷きます。  実際、美しい良子に頼られることがほんの少し嬉しくもあり、誇りでもありました。良子が借りにくるのは私の持ち物の中でもお気に入りのものばかり。私たちは趣味まで似ているのだと、再認識することができたのです。  反抗期をこじらせたのか、良子の口数はどんどん少なくなっていき、言葉を交わさないことも増えていました。けれど、姉である私を頼るとき、こちらを伺うそれは昔の可愛らしい良子のままなのです。私にとって、良子はいつになっても血を分けた可愛い幼い妹でした。  一緒に育った私たちはおかしいくらいに似ています。服の趣味も、好きな芸能人も、好みの食べ物も。良子が「貸して」と言った鞄を、アクセサリーを、私も使いたいこともありました。それらを眺めながら常々思ったものです。 「ああ、同じものが何だって二つあればいいのに。そうであれば、私は良子と仲良く半分こすることができるのに」と。
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