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直樹は、笑顔で手を振りながら、反対側のコーナー付近にある入場門に向かって走って行った。
やがて、人陰に隠れ、直樹の姿が見えなくなる。
しばらくして、
「・・・帰るか」
上田が田上に、呟くように言った。
「えっ !? ・・・最後まで、見ていかないんですか ?」
「ああ・・・別れは苦手なんだよ・・・直樹に泣かれても困るし・・・」
「・・・」
「それに・・・」
「それに ?」
「これ以上いると、俺達の任務に差し支えるしな・・・」
「・・・もう、充分、差し支えてるでしょ」
その日の夜。
夕食を食べ終えた直樹は、ソファーでテレビを見ながらくつろいでいた。
その時、玄関の方から、カタッ、パサッという、郵便受けに何かが届いた様な音がした。
「何かしら、こんな時間に・・・直樹、ちょっと見てきて」
皿洗いをしていた母が、直樹に頼んだ。
「うん」
直樹が、玄関に行って確認してみると、郵便受けに入っていたのは、A4サイズくらいの茶封筒だった。
宛て先には、直樹の名前だけが書いてあった。
しかし、切手は貼られていない。
裏返してみると、差出人の所には『上田』
そして、その横の住所には、『夜空』とだけ書いてあった。
直樹は、急いで自分の部屋に駆け込み、封筒を開けた。
すると、中にはノートが入っていて、脚が速くなる為のトレーニング方法が、事細かく書いてあった。
一通り、ざっと目を通した直樹は、そのノートを抱きしめながら、窓から夜空を見上げた。
「艦長 !」
「どうした ?」
「また、流れ星と勘違いされて、お願い事をされました」
「えー !! ・・・またかよ !! 気を付けろって言っただろ ! 馬鹿 !」
「すいません」
「で、なんて、お願い事されたんだよ」
「・・・また、あの、おじさん達に会えますようにって・・・」
「・・・」
「・・・どうします ?」
「・・・まあ・・・その内な・・・」
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