流れ星 ?

4/12
前へ
/12ページ
次へ
「凄いな ! ボルトより速いぞ !」 三十代の男が直樹を褒めた。 「そりゃそうでしょ。どう見たって50mもないんだから」 二十代の男が、冷静に言った。 「マラソンの世界記録が2時間ちょっとだろ・・・それと比べたら、もう、比べもんにならない位速いぞ !」 「だから、距離が全然違うでしょ」 「走り高跳びの世界記録が2m40位だっけ ? ・・・それと比べたらなあ・・・もう・・・とにかく凄いぞ !」 「単位が全然違うし・・・比べないでくださいよ。そんなもんと」 「本当 !? ・・・じゃあ、金メダルも夢じゃないって事 !?」 「ほら、その気になっちゃってるじゃないですか」 「ああ、もっともっと頑張ればな」 「じゃあ、他には、どうすればいいの !?」 目を輝かせながら、直樹が聞いた。 「その前に、ちょっと休憩しようか・・・疲れただろ」 ベンチに座っている三十代の男と直樹の元に、二十代の男が、三本のペットボトルを手に帰って来た。 そして、二人にペットボトルを渡しながら、三十代の男の隣に座った。 「ありがとう」 直樹は、受け取ったペットボトルを開けると、一気に、半分ほど飲み干した。 「おじさんて、陸上やってたの ?」 一息ついた直樹が、三十代の男に聞いた。 「まあな・・・」 三十代の男は、曖昧に頷いた。 「凄い選手だったんだぞ ! 色んな大会で優勝して・・・スローナじゃ、知らない人はいない位だからな」 二十代の男が、代わりに自慢した。 「スローナ ?」 「あっ ! ・・・」 二十代の男が、自分の犯した過ちに気付いた。 三十代の男は、直樹に気付かれないように、二十代の男を睨んだ。 「スローナって、どこ ? ・・・外国 ?」 「ああ・・・えーっと・・・アフリカの西の方にあるんだ」 三十代の男が、なんとか取り繕った。 「日本人にしか見えないけど・・・」 「・・・父親の仕事の都合で、中学生くらいから住むようになったんだ・・・」 「へー・・・初めて聞いたな、スローナなんて・・・どんな国 ?」 「どんな国って言われてもなあ・・・」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加