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「有名な場所とかあるの ?」
「有名な場所って言われてもなあ・・・喫茶スローナとか・・・スーパースローナとか・・・」
「喫茶スローナ ?」
「・・・まあ、日本と違って、まだ全然、発展してない国だからな・・・」
「そうなんだ・・・そう言えば、まだ、おじさん達の名前、聞いてなかったね。なんていう名前 ?」
「名前 ?」
「うん」
「・・・上田・・・」
三十代の男が、迷いながら答えた。
「おにいさんは ?」
「・・・田上・・・」
「へー・・・上田と田上か・・・なんか、漫才コンビみたいだね」
「ハハハハハ・・・そうだな」
直樹の尋問から、やっと解放されたと思った二人は、安堵の笑みを浮かべた。
「君は、なんていう名前 ?」
これ以上、余計な事を聞かれたくなかった上田は、攻撃は最大の防御とばかりに、直樹に質問を始めた。
「中山直樹」
「何年生 ?」
「小学5年生」
「なんで、走る練習してたんだ ?」
「今度の日曜日に運動会があるんだ」
「ふーん」
「僕、脚が遅くて、今までリレーで一回も人を追い抜いた事が無いから・・・」
「でも、なんで、一人で練習してたんだ ? 自分でストップウォッチ持って走るより、友達とか、お父さんやお母さんに計ってもらった方が走りやすいだろ」
「速くなれればいいけど・・・あんなに練習したのに、全然速くなってないなって、友達に思われるのが嫌だし・・・突然速くなって驚かせたいっていうのもあるし・・・この公園なら、誰もいないから」
「お父さんやお母さんは ?」
「お父さんは、いないんだ・・・僕が小さい時に離婚しちゃって・・・お母さんは、仕事で忙しいし・・・」
「そうか・・・」
直樹の話を聞いて、その場の雰囲気が暗くなった。
「ねえ、もっと教えてよ ! 速くなる方法」
直樹は、その雰囲気を変えようと、明るく言った。
「そうだな・・・」
そう言いながら上田が顔を上げると、その場の雰囲気に気を使ったのか、辺りも暗くなっている事に気付いた。
「もう、時間が遅いから、また、明日だな」
上田は、腕時計を見ながら言った。
「えっ ! 明日も教えてくれるの ?」
「ああ、勿論」
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