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「仕事は大丈夫なの ?」
「今、休みを取って来てるから、全然、問題ないよ」
「いつまで ?」
「今度の日曜日まで」
「えっ ! ・・・じゃあ、運動会も見に来てよ !」
「ああ。絶対、見に行くよ」
「やったー !!!」
翌日からは、練習方法を少し変えた。
昨日は直線で走っていたのを、トラックを走る事を意識して、公園の内側を楕円状に走るようにした。
そうすれば、距離も長く出来るし、中央から見ていれば、フォームのチェックもしやすい。
「腕の振りは、後ろの方を大きくして !」
上田は、楕円の中心で、直樹の走りに合わせて回転しながらアドバイスした。
「前に出した脚は、もっと高く上げて !」
直樹は、そのアドバイスを取り入れ、走り方を変える。
「そうそう、いいぞ !」
こうして、直樹と上田達は、毎日、公園で練習を続けた。
そして迎えた、最後の練習になる土曜日。
「ハアハアハア・・・何秒 ?」
その日、何本目かを走り終えた直樹が、田上に聞いた。
「15秒64」
田上は、ストップウォッチを見せながら直樹に言った。
「やった ! 新記録だ !」
「良かったぞ ! 直樹。今までで一番良い走りだったよ」
上田が近寄って来て、直樹の肩を抱きながら褒めた。
「本当 !?」
「ああ・・・ちょっと休憩するか」
「うん」
三人は、並んでベンチに座っていた。
直樹は、田上が買って来てくれたペットボトルを開け、一口飲んだ。
「いよいよ、明日が本番だな」
上田が、直樹の肩に手を置きながら言った。
「うん」
「最初の頃と比べて、全然速くなったよ」
「おじさん達のおかげだね」
「そんな事ないよ。直樹が頑張ったからだよ」
直樹は、照れ臭そうにペットボトルを口にした。
そして、遠くを見つめながら、
「願い事って、叶うんだね・・・」
と、呟くように言った。
「えっ ?」
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