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「どうします ? 明日」
田上が、上田に聞いた。
「どうしますって ?」
「運動会、本当に行くんですか ?」
「当たり前だろ」
「本当は、気付いてるんじゃないですかね、直樹・・・俺達が宇宙人だって事」
「そんな訳ないだろ !」
「直樹が、お母さんに話して・・・お母さんが通報して・・・」
「そんな訳ないだろ・・・」
「明日、運動会を見に行ったら、知らない間に、警察や自衛隊に取り囲まれてて、捕まったりなんかして・・・」
「そんな訳・・・ないだろ・・・」
日曜日。
上田と田上は、グラウンドの外にある電柱の陰から、運動会を見学していた。
「思いっきり変装してるじゃないですか・・・そんな訳ないだろ、とか言っときながら」
「一応だよ」
上田は、田上の言葉通り、帽子にサングラスにマスクという、完璧な変装をしていた。
「なんで、スカートまで穿いてるんですか ?」
上田は、足首まで隠れる、ロングの巻きスカートを穿いていた。
「だから、一応だよ」
「おかしいでしょ・・・おっさんがスカートなんて穿いてたら・・・」
「完璧な変装だろ」
「余計に怪しまれて通報されますよ」
「それに加えて、世の中に一石を投じるっていう意味も含まれてるけどな・・・」
「一石を投じる ?」
「ああ・・・おかしいとは思わないか ?」
「何がですか ?」
「女はスカートもズボンも穿くくせに、男はズボンしか穿けなくて。男がスカート穿いたら変体扱いするって」
「しょうがないでしょ・・・女と男は違うんだから・・・取り敢えず脱いでくださいよ ! 目立って仕方ないから」
上田は、渋々スカートを脱いでリュックの中に入れた。
下には、ちゃんとズボンを穿いていた。
「帽子とサングラスとマスクも」
その言葉にも、素直に従った。
その時、
「5年生のクラス対抗リレーに出場する選手は、入場門に集まってください !」
というアナウンスが流れた。
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