1.帰郷

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九州最大の繁華街・博多。 駅の外に出てみてざっと目の前の景色を眺める。 この地に降り立つのは十五年ぶりだ。 だけれども、東京に住んでいて時折駅周辺の景色を見聞きするせいか、そんなに長い時間が経過したようには感じない。 あの日発った時には、まさか自分がこんな風になっているとは思ってもみなかった。 あの頃より悪いであろうことに自分の身を置くとは想像だにしていなかった。 地元には、あの頃は地下鉄は通ってなかったけれど、今は走っている。 けれど、なんとなく乗る気にはなれなくて、慣れたバスで実家に向かった。 東京では、そこそこは有名になった気でいたけれど、それも東京でだってあくまでも一部の話。 まして地方ではいくら地元だろうと自分のことは全然知られていないのだと、バスに乗って改めて気づく。 誰一人、俺が何者であるかなんて知っている様子はない。 他の地方はともかく、せめて地元でぐらいは有名になっているとばかり思っていた。 むなしいけれど、一方で今の自分を人目に晒されたくはないから好都合だ。 とは思うものの、やっぱりむなしさは拭えない。そしてそんな自分に反吐が出そうだ。
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