第3章

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「おはよう。クリス」 「おう! おはよ、光希」 名前を呼べば、元気に手を上げてくれるクリスに笑い返す。 思えば、あれからこのやり取りをする度に同じように笑みがこぼれるようになった。 本当に文字通り、こぼれてしまう。 恥ずかしくったって気まずかったって、気持ちとは関係なく。 明らかに不自然な俺に、自然に答えてくれるのが嬉しい。 それを揺れる前髪でごまかしながら、クリスの隣に腰を下ろした。 「今日は降りそうだな」 「ん? あぁ…降水確率50%らしいね」 「あー…やっぱり? 俺、傘持ってきてないわー」 何気ない会話をしながら、俺はキョロキョロ周りを見回した。 一限目にもかかわらず早めに来たからか、まだ教室は人が少ない。 だけど、俺の目的はそれを確認するためじゃなくて。 肝心の本人の姿はまだ見えない。 「由貴か?」 「うん…」 「由貴は今日は休みだってさ」 「え? なんで…?」 「さぁ……俺もさっき聞いたばっかだからさ」 ほら、と見せられたスマホの画面には、たしかに『今日は学校休むから』と簡潔に表示されていた。 少しだけ、胸がチリッと痛む。 別にクリスと由貴が連絡を取り合っていたって今さらのことなのに。 「まぁなんでか俺も聞いたけど、まだ既読ついてないし単純に忙しいんじゃない? 何してるか知らないけど」 「そ、そっか…」 「あいつのことだから、ちゃんと後で教えてくれるよ。だからそんな顔しないで?」 「し、してないって…! ちょっと心配しただけで…」 「心配したって、しょっちゅうあいつ光希ンチに行ってるんじゃないの?」 「ま、まぁそうなんだけど…最近はめっきりって言うか…」 「ふうん」 クリスはなんでもないことのようにそう言ったけど、俺の心はモヤモヤしていた。 一方で、心配しすぎか、とも思った。 単に忙しいだけかもしれないし。 クリスだっているし。 そう自分に言い聞かせた。
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