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「……どういう状況だ、これは」
おやっさんの元気のいい声がいつもよりも低い。
ズズズ、とラーメンをすする音がやけに大きく聞こえる。
こんな時でもあいも変わらずおやっさんの醤油ラーメンは美味いからすごく不思議だ。
いや、俺が現実逃避してるからか。
俺の両脇には同じく醤油ラーメンをすする赤メッシュとクリス。
2人は一心不乱に麺を啜っている。
「あの…ごめんな。おやっさん。突然友達連れてきたりなんかして」
「いやぁこちらとしちゃあ、みっちゃんのダチなんだから勿論大歓迎なんだぞ?
だが、みっちゃんがここにダチを連れてくるとは思うとらんかったからちょっとビックリしただけとよ」
おやっさんはいろいろ方言のまじった声でガハハと笑った。
かなりのオヤジ口調だけど、実はまだ四十代前半のおやっさんは俺の父さんの昔の後輩だ。
いや、四十代前半はオヤジか?
「そんで? そっちの怖い兄ちゃんとスマートな兄ちゃんはどうだ?」
「ん? もしかして俺か?」
クリスがキョトンとした顔で自分を指差した。
コクンと頷くと、なぜか頭を撫でられた。
なんでだ??
「美味しいですね。俺、初めて醤油ラーメン食べたんです」
「お! そうかー! いつもは何派なんだ?」
「あ、いや…いつもはラーメンはあんまり食べなくって…」
クリスが頭をかきながら小さく頭を下げた。
おやっさんが『そうかそうか』と気にしてないように笑っているけど、これはたぶん少し悲しそうだ。
すると、ずっとラーメンと睨めっこしていた赤メッシュが顔を上げた。
何を言うのかとじっと見ていると、
「さすがこいつのオススメですね。他の店よりも味がサッパリしてる分チャーシューのコクが効いてて美味しいです」
「お! 兄ちゃんイケる口だな!」
「いえいえ、俺なんてまだまだです。学校からも近いしこれから通わせていただいてもいいですか?」
「おう! 兄ちゃんみたいなイケる口ならいつでも来てくれ! 夜中でもつくっちゃるわ!!」
今度は俺たちがキョトンとする番だった。
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