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ゾロゾロと人が行き交う中でのスマホ。
危ないし集中できないせいでビックリするほ
どの簡潔な文章になってしまった。
もう後の祭りとわかっていても後味が悪い。
--ピロン♪
その苦い気持ちを見透かすように、返信はす
ぐに来た。
画面にはやっぱり簡潔に、
『あと5分で着く』
と書かれてあった。
思わずクスリと笑いをこぼすと、すれ違った
人が怪訝そうに俺を振り返った。
おっと、いけないいけない。
最近クセになりつつある口角を少しだけ上げ
る。
ちょうど微笑んでいるか分かんないくらいの
この角度が重要なのだ。
これで周りから無愛想で近寄りがたいという
レッテルを貼られなくて済む。
『じゃあ待っとく』
そう打ち込んでから、ハタと思いついた。
『おはよ』
『は? 今さらかよ。…おはよ笑』
笑いつきで返ってきたそれに、ホッと胸を撫
で下ろす。
その理由は……まぁ俺が人見知りだから、と
いうことにしておいてくれ。
それから少し歩き、前から待ち合わせしてい
た場所に立つこと2分。
スマホをイジる視界の端に見知った顔を見つ
けて顔を上げた。
「あっ……おはよ!」
「はよー、光希」
「うん、おはよ。…く、クリス」
少し反応が過剰だったか。
相手の名前を呼ぶだけでいっぱいいっぱいな
自分が恥ずかしくて、どもってしまった。
無理やり照れを笑顔でごまかすと、クリスの
目が見開かれた。
…あれ。
だけどそれはほんの一瞬で、すぐにクリスも
笑い返してくれる。
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