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クリスと俺はお互いのスーツ姿をからかいながら、会場へと向かった。
会場に近づくほどに人が増えていく。
苦い顔をしていると、クリスがクククと笑った。
「なんだよ。なんか面白いヤツいた?」
「いや? …光希は人ごみ苦手?」
「え…」
田舎出身なのを見透かされた気がして、どきりとする。
クリスは方言とかないように見えるから、もしかしたら都会に住んでるのかも。
長身のクリスはスーツも似合っているし、垢抜けた印象を受ける。
俺みたいなのが着たらちんちくりんになるのに。
「いいじゃんいいじゃん! 俺も苦手だし」
そう言って笑う顔は無邪気だけど、気をつかって言ってくれてるにちがいない。
きっと俺が変な顔してたからだ。
少し面白くなくてブスッとしていると、ブハッと笑われた。
「…かばうのか気をつかってるのかどっちかにしろよ」
「ごめんごめん! 悪気はない。うん! ははは…」
クリスの笑いのツボがよく分からない。
まぁ高校まで友好関係がかなり狭かった俺が言うセリフじゃあないか。
諦めに近い気持ちを深く考えずにしておく。
そうしている内に会場に着き、俺たちは指定された席に着くために別れた。
途端にうるさく感じる視線を必死に無視して歩を進めると、女子の塊に行き着いた。
手に持っていた紙でもう一度席を数えて確認する。
『うわ…マジかよ』
どうやら俺の席はもうすでにあの人たちで埋まっているらしい。
しかも女子たちはお喋りに夢中でこっちに気づいていない。
仕方なく空いている席に腰を降ろした時だった。
「おい」
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