夕焼けレンズ

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 最後に顔を会わせたのは、新年の挨拶をして、酒を酌み交わした時だ。  ふらりとどこかに行ってしまっては、いつの間にか戻ってきている。そんな人ではあったけれど、ほんの数ヶ月、顔を出さない内に、二度と会えないところへ行ってしまったなんて。正直、未だに信じられない。  とはいえ、叔母さんの調子が特に良くなくなってからのここ一年ほどは、趣味の旅行にも行けなくなっていたようだけれど。  ――土産は良いから、遊びにおいで。  叔父さんの口癖を思い出す。  それが何よりの土産になるから、と白い歯を見せてくれた叔父さんに、僕は確かに、父親の影を見ていた。 「一人で星を眺めていて、そのままなんて。あの人らしいわよね」  望遠鏡に視線を向けたまま、叔母さんがぽつりとこぼす。夕陽に照らされて、白い髪がキラキラと輝く。 「あの」  このまま、叔母さんまで消えてしまうのでは無いだろうか。  なんだか心配になって、先を考えずに口を開いていた。 「なあに?」 「え……と。本当によければ、もらっても良いかな? 望遠鏡」  ええ、もちろんよ。  こちらに向き直って微笑んだ叔母さんは、いくらかこちら側の世界に戻ってきてくれたように見えた。
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