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酔いどれエール
「車で来ればよかった……」
分解出来るパーツを分解して、箱詰めしてきたとは言え、大きな望遠鏡を抱えて都内の電車を乗り継ぐのは、なかなか骨が折れた。
久しぶりに会った親戚と話し込んでしまった事もあり、ワンルームのアパートに戻ってきたのは、日が変わる頃であった。
組み立てるのはまた今度にしよう。明日からの五日間は、何食わぬ顔で激務が押し寄せてくる。
それを、何でもない顔をしてこなさなくては、次の休日はやってこない。
「もう一回、話したかったな」
飲食店を経営し、自由に働いていた叔父さんの姿を思い出す。
もちろん僕や友人には見せない苦労はあったにせよ、それを感じさせない程度には生き生きとして見えた。
叔母さんを手伝いたかった気持ちはもちろんだけれど、手伝いに行ったのにはもう一つ理由があった。
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