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想い出ロスト
ギリギリのところで息継ぎをして、五日間を乗り切った僕は、土曜日の昼間に望遠鏡のメンテナンスに夢中になっていた。
思ったよりも綺麗に、細部まで手入れがされていた事には驚いたが、さすがは叔父さんだ、という気持ちもあった。
趣味を本気でやる為に働いているんだ、と豪語していただけはある。
大変な時でも、人生に潤いを無くしたらお終いだ。そう言って、月の無い夜に、星明かりを背に自慢げにしていたのを今でも覚えている。
あれは確か、話題の流星群を穴場スポットで見ようとか、そんな事を言って出かけた時だ。
僕は社会人になったばかりで、翌週に控えた課題の事で頭が一杯になっていた。星を見に来たのに下ばかり向き、叔父さんの話にも上の空だったところに、不意打ちで言われたのだ。
その後で聞いた、苦手な相手と上手に付き合うコツなる講義は、とても僕には真似の出来ない突拍子の無いものばかりで役に立たなかったけれど、それでも随分、気が紛れたのは確かだった。
「あーもうなんだこれ、年かな」
想い出に刺激され、弛み始めた涙腺を独り言で誤魔化して、都心にしては空のよく見える、角部屋の端の窓際に望遠鏡を設置した。
幸い、よく晴れているし、夜から雨になるという予報も出ていない。あまり見えなければそれはそれで、車で出かければ良いだけの話だ。
満足した僕は、週末の食材を買い込みに街へ出た。
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