幸せグラフ

1/2
前へ
/10ページ
次へ

幸せグラフ

 二週間が経った。  叔父さんは、日が落ちて少しすると、決まって望遠鏡の前に現れた。  相変わらず、こちらからの呼びかけに返事はなく、あれやこれやと独り言を並べている。半分程度は星や自身のお店の話で、もう半分が叔母さんについて。それから、たまに僕の事だ。 「どうしてそんな風に、いつも前を向いていられたの?」  答えが無いとわかっていても、僕は時折、叔父さんに声をかけた。  微妙にかみ合わない会話に、寂しい気持ちにはなったけれど、流れてくる話はどれも、前向きな爽やかさがあった。やはりおかしな話だけれど、生きるエネルギーに溢れていたのだ。それらは僕に、大変な活力を与えてくれた。 「いつも望遠鏡の前か、お店にいたよね。叔母さん、寂しくなかったのかな……なんて言うのは、ずるいか。ごめん」  土曜日の夜。窓を開け、よく晴れた夜空を見上げて、発泡酒を口に含む。  いつまで続くかわからないけれど、叔父さんが出てきてくれる内は、このままで良い。そう思っていた。 「そうだね。今度はちゃんと迎えに行ってやらないと」  心臓が飛び跳ね、危うく缶を取り落とすところだった。叔父さんがこちらを振り返り、寂しそうな笑顔を見せたのだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加