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夕焼けレンズ
家具のほとんどが引き払われ、がらんとした部屋の真ん中に立って、天井を見上げた。
よく言えば年季が入って味の出た、悪く言えば古臭いマンションの一室だ。
「今日はありがとうね、忙しいのに手伝ってもらって」
いいえ、とぎこちない笑顔を作って、視線を泳がせる。窓際にひっそりと置かれた天体望遠鏡が目に入った。
「ああそれ。良かったらもらってくれない?」
「いえ、それは……」
「せいちゃんが使ってくれたら、あの人も喜ぶと思うの」
目を細めた叔母さんは、夕方に差し掛かった、淡い陽の光のせいなのか、随分とぼやけて見えた。
叔父さんが亡くなって一ヶ月。どたばたと必要な手続きや行事をこなしつつ、部屋の片付けもしなくては、と親戚に召集がかかったのが先週の事だ。
普段からあまり身体の調子が良くなく、篭りがちだった叔母さんが出てくると聞き、僕は入っていた予定をキャンセルして、駆けつけたのだ。
小さな頃から随分とお世話になった二人だ。返しきれなかった恩を少しでも、そう思ったのだ。
星の見方や、キャンプの楽しみ方、はたまた写真や読書の面白さまで、父のいない僕に色々な事を教えてくれたのは、亡くなった叔父さんだった。
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