一章 裏切者の魔法使い

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 扉を入って右手には下へ続く階段があり、研究所はその先にある。 地下へ研究所を造ったのは、もし敵襲で爆破されようとそう簡単には壊れないようにだとか。 ちなみに地上の建物は来客があったときの接客に使われている部屋や、泊り込みがちな研究員の仮眠室などがある。研究所に足を運ぶ事はあっても泊り込むことなどまずないクロノはもちろん地上の部屋を使った事はない。 前を行き階段を下りるルーエンの頭を見下ろせる状況に若干優越感を感じながらクロノが辿り着いたのは、またも立ちはだかる巨大な扉の前だった。 「クロノちゃん、ちょっとこの子持つの代わってくれる?」 「え、やだ。その辺転がせばいいじゃん」 「もう、先輩なんでしょ?後輩の面倒くらいみなさい!」 「わかったから……」 頼むからいい歳して頬を膨らませながら怒るとかやめてくれ。 クロノはギノアを背中に渋々背負う。 「うぐっ」 意外と大型犬だったギノアの重さに潰されそうになりながら必死に足を踏ん張って耐えるクロノ。 「なんだかそのまま放置したくなってきちゃったわ……」 「ふざけんなさっさと開けろ変態!」 足をプルプルさせながらなんとか立っているクロノににやけ、結局たっぷり時間をかけて眺めた後、ようやくルーエンは扉に向かい両手をかざした。 「魔力認証開始」
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