一章 裏切者の魔法使い

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白衣を紫煙になびかせるその人物は、クロノの陰に隠れていたギノアを見て目を見開いた。 「あ、あなた……!」 あちゃーという顔をしているクロノに対し、状況が理解できずに白衣の人物とクロノを交互にみるギノア。 わなわなと震えたその人物は、ギノアに向かって駆け寄った。 全速力での突進とも言う勢いで。 「ひぎゃあっっ!!」 華麗によけたクロノによって盾を失ったギノアは、突進した人物に抱きつかれると、そのあまりの力に骨が軋む感覚を感じて半泣きで叫んだ。 「かぁんわいい~~!子犬みたぁい!クロノちゃんこの子誰よ~!」 「せ、せんぱ……」 がくっと項垂れ泡を吹くギノアにさすがにまずいと思い、クロノは苦笑いで答えた。 「可愛いのはわかったが、死にそうだから放してやってくれないか?ルーエン」 「あら、ほんと。ごめんなさいね、可愛いものだからつい」 ぱっとギノアを解放したルーエンは、バツが悪そうに頬をかいた。 地面に突っ伏したままのギノアをつんつんしながらクロノはルーエンを見上げる。 相変わらず悪趣味な髪の色をしている。 だが不思議と似合ってしまうだけの顔とスタイルを持ち合わせ、赤縁の眼鏡の向こうから覗く漆黒の瞳は柔らかだ。 白衣のオネエ、ルーエン。 変人の集まり魔道師団所属研究所、その筆頭の所長は彼であり、クロノを呼び出した張本人である。
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