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 ある暴君が王をつとめていたその国は、ある日暴君の暗殺によって生まれ変わった。 新しく王座についた者は民の声によく耳を傾ける賢王として君臨した。 暴君が暗殺されて1年。 その国の最端の森の中。誰も住んでいないはずのそこに、場違いな騎士がひとり、足を踏み入れた。 暫く歩き、辺りがより暗くじめじめとしてきたとき、騎士は開けた場所にぽつんと建つ、一軒の小さな小屋を見つける。 迷いなき足取りで歩を進め小屋の戸を叩くと、しばしの沈黙の後にゆっくりと扉が開かれた。 中から顔を出したのは、美しい顔ながら酷く痩せ細った男であった。男は騎士を目にすると驚きを隠すこともないままに勢いよく戸を閉めようとする。 が、既に時遅く、騎士の足が戸の隙間にさしこまれており、男は戸を閉めることも騎士から逃げおおせることもできなかった。 しかたもなしに男は騎士に話しかけた。 「なんの御用か。こんな辺境まで来られるなど、騎士のお方が珍しい」 男の嫌味たらしい言葉に騎士は顔色ひとつ変えることなく用件を話した。 「新王国の繁栄に力を貸して欲しい。かつての王につかえし魔法使いよ」
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