二章 賢王と愚王

3/48
91人が本棚に入れています
本棚に追加
/260ページ
 二人が仲良く遅刻して魔法師団の詰め所に行くと、入り口の前でレイルが待っていた。 「遅かったね、二人とも。さっそくで悪いけれど、ちょっと街までおつかいを頼めるかな?」 一応疑問系ではあったが、その細められた目は確かに語っていた。『遅れてきたんだから拒否なんかしないよな?』と。 無言でこくこく頷く二人に、レイルは折りたたまれた紙切れを渡した。 「そこに書いてあるものを揃えて欲しいんだ。制限時間は午後三時まで。それまでなら街をぶらついても構わないけれど、物はきっちり時間内に僕の所まで持ってくること。今日中に必要なものもあるから、もれはないように頼むよ」 「了解っす!先輩、さっそく行きましょう!」 「何でお前そんなテンション高いんだよ」 「それはその……えと、気のせいじゃないっすかね?」 じと、としたクロノの視線に射抜かれ、誤魔化そうと下手な口笛をふくギノア。彼の頭の中にデートという単語が浮かんでいたのは言うまでもない。 昨日までと変わらない、いつも通りの二人のやりとりに、レイルは人知れず微笑んだ。 「ともかくっ!副団長、行ってくるっす!」 「うん。気をつけてね」 「ちょ、ひっぱんなっつの。聞いてんのかよギノアッ!」 「レッツゴ~っすよ、先輩!」
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!