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魔法使い、と呼ばれた男はその言葉に顔をしかめた。 「私はもう魔法は使わぬと誓った身だ。それに、あのお方に最後までつかえていた私など、現王にすれば邪魔だろう」 そう、男は前王、暴君とされた王に付き従い、その最期まで共にあった者だったのだ。 「王からの言伝てだ。お前が従わぬときは言えと仰せつかっている」 騎士のその言葉に男は怪訝な表情を浮かべた。 騎士は続けた。 「あの愚王を――たのはお前だ。ならばその責任を果たすべきではないのか?」 「なぜ、それを……」 男の顔が青白く染まり、今にも卒倒しそうにふらついた。 騎士は後退る男をしっかりと見据えて言った。 「断るまいな?」 その日、辺境の森から人が消えた。
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