二章 賢王と愚王

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クロノとギノアは店内を見て周り、指定された聞いたこともない名前の茶葉を探す。 「けっこう色んな種類あんだな」 「ですね。あっ、先輩!みてみて!これ、花びらが入ってますよ!」 ギノアがぐいぐいと腕を引っ張るので、しかたなくそちらを見たクロノは、すぐに興味深そうにその茶葉の入った瓶を手に取った。 「すごいな。あ、薔薇も入ってるんじゃないか?これ」 「俺たちにぴったりっすね!」 魔法師団の紋章に描かれた薔薇をクロノに見せながら笑うギノア。 なんとも無邪気なその姿に、微かに痛む胸を隠してクロノは笑った。 「ふふ、それは花びらの入ったフレーバーティーなんです」 口元を隠して上品に笑いながら話しかけてきたのはこの紅茶店の店主の女性だった。 「すみません、うるさくして」 「いいえ、大丈夫ですよ。魔法師団の方でしょう?レイル様には御贔屓にしてもらってますから」 「そうですか。実は、そのレイルの使いなんですよ」 「あら、そうだったんですね!じゃあ、いつも買われる茶葉かしら?」 いつも、がわからずに苦笑したクロノは、ギノアに持っていた買うものが書かれた紙を店主に渡させた。 「あら?違ったみたい。こっちですよ」 店主は店の端にあった背の高い棚から一つの瓶を取る。 「カルチェラタンです。レイル様、お疲れのようでしたら無理なさらないようお伝え下さい」 「はい。ありがとうございます」 二人は頭の中をクエスチョンマークでいっぱいにしながら紅茶を買うと、次の店に向かった。
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