一章 裏切者の魔法使い

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  王宮は日々様々な話題で賑わっている。 前王の暗殺によって王国が生まれ変わって早1年と半年。現王・ウィルソンの力もあり、今では革命の際に被害を受けた街や城の一部の復興復旧も済んでいた。 人々の心に余裕ができてきたこの頃では、もっぱら娯楽に関する話題が街をにぎわせている。 王宮もまた例外ではなく、メイドから騎士に至るまで様々な者が流行について話していた。 そんな移り変わりの激しい話題の中、唯一半年前から変わらずに話されている話題が一つ。 「裏切者の魔法使い」についての話しだ。 彼は王宮魔法師団という、王国の魔法使いを取り仕切る魔法使いの集団に所属しながら魔法を一切使わない。ときには戦場へ赴く事もある魔法使いの総轄の一人が魔法を使わないというのは、ただ変わり者だと笑い飛ばせる話ではないのだ。 さらに彼は暴君・愚王と名高い前王に取り立てられ、その最期まで傍に仕えていたという。 そんな現王に批判的な者が王宮で幅を利かせている。 王宮の人間からすれば非常に目障りであり、彼が魔法師団に加えられて王宮に仕えだして半年経つ現在も、変わることなく彼の陰口や批判は続いているのだ。
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