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穏やかな昼過ぎ、短い栗色の癖毛をゆらして王宮を走っているのは魔法師団の一人、ギノア。
まだ新人の彼はよく先輩のつかいっぱしりをしている。
今日もまた、魔法師団団長の鬼のような形相に背中を押され、姿が見えないある人を捜し回っているのだった。
ギノアがすれ違うメイド達に好奇の目で見られながら辿り着いたのは、王宮の北にある書架塔と呼ばれる塔。
中は本で埋め尽くされ、王宮の図書館のような役割を担っていた。
重厚な扉を開け中を窺うと、捜し人は窓辺の本に埋もれたソファで眠りに落ちていた。
丁度陽光が差し、実に寝心地が良さそうだ。
その人物の穏やかな寝顔にギノアは思わず見惚れてしまうが、ぶんぶんと頭をふって切り替える。
「先輩っ!クロノ先輩!おきてく~だ~さ~い~っ!!!」
クロノと呼ばれた男は、突如耳元で発せられた色気も何もないモーニングコールに不愉快そうに目を開けた。
肩まで伸びた艶やかな黒髪がゆれ、白い肌をなでていく。
視界にわんわん喚くうるさい後輩をうつしたクロノは、普通にしていれば美しい顔を盛大にゆがめて嫌悪を表した。
「なに。うるさい。喚くな駄犬」
「駄犬!?」
クロノはだk、、、ギノアに辺りを見るよう促す。
ここは書架塔。つまりは図書館である。
わんわん大声で喚いていたギノアは、周りにいた利用者に思いっきり睨まれているのだった。
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