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「先輩のせいでしばらく出禁になったっす」
ぶっすーとくりっとした目が特徴的な整った顔を膨らませながら、ギノアは数歩前を歩く黒髪の青年に文句を言った。
「いや、大声出したのお前だし。てか俺まで出禁とか意味分からんから。どうしてくれんだよ、この駄犬」
「さっきらか駄犬駄犬ってひどくないっすか!?さすがの俺でも傷つきますよ!?」
「じゃあ少しは大人しくすることを学べ」
すたすたと前を行くクロノはシャツにズボンとラフな格好。一方のギノアは右腕に魔法師団の薔薇のエンブレムのはいった制服に身を包んでいる。
クロノも一応は魔法師団の一員だが、堅苦しいと言って制服は滅多に着ない。
だがこれでもちゃんと王の前に出るときや祭典・式典のときなどは、地味にしつこい魔法師団の副団長の努力あって、制服をきちんと着るようにはなったのだ。
まずそれらに顔を出すほうが珍しくはあるのだが。
新人というだけあって、ギノアはまだ二週間前に魔法師団に入ったばかり。一方のクロノは王宮に仕えている期間自体は長く、ほとんど仕事をさぼりがちにも関わらず、魔法師団団長にも一目置かれている存在だった。
そんな不真面目が歩いているようなクロノの矯正もかね、ギノアの教育係はクロノになったのだが、最早どちらが教育されるべきか分からない状態である。
「せんぱ~いっ!歩くの速いっす!おいてかないでくださ~い!」
「置いてこうとしてんだよ、馬鹿」
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