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魔法師団が動き始めた頃、執務室にいたウィルソンは心ここにあらずの状態で書類を片づけていた。
窓の外から聞こえてくる喧騒に今すぐにでも飛び出して行きたい衝動を押さえ込むも、自然とペンを持つ手に力が入る。
「書類が破けそうなのでそれ以上力込めてサインしないでくれますか?」
「……」
書類を受け取りに来ていたリリスがそう言うも、今日のウィルソンは静かに睨むのみだ。
「…はぁ」
重苦しい雰囲気の漂う執務室に、呆れたようなリリスの溜息が消えていく。
「あー、もう、これだからめんどくさい。
そんなに気になるなら後で魔法師団の詰所に足を運べばいいんじゃないですか?どうせ書類はそこにあるだけですし、謁見の予定までには時間ありますし」
「…行っても大丈夫だと思うか?」
「このやり取り何回目でしょうね。つい先日もそう聞いてきて結局行ってましたよね。
行きたいなら行けばいいでしょうが、うざいなぁ」
「…あいつに会わずにすむだろうか」
「会いたいのか会いたくないのかハッキリしてくれませんかね!?」
リリスは綺麗に整えられていた髪を乱雑に掻きあげて苛立ちを示す。
めんどくさい主に構うストレスで、もういっそのこと辞職してしまおうかと軽くリリスが思ったとき、ウィルソンは重い口を開いた。
「会いたいさ。だが、あいつは違うからな」
「……」
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