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ウィルソンが近衛の騎士と共に魔法師団詰所訪れたのは、争う音が消えてまもなく。
連絡を受けて出迎えたアイジスは内心「またか」と苦笑しつつも、快くウィルソンを招き入れた。
目の前にいる王の真意を即座に汲み取ったアイジスだが、表面上は今回の作戦の成果について尋ねられた事になっている。
なるべく早くお帰り願わなければ厄介な事になりかねない。
アイジスはさっそく表面上の本題について話し始めた。
「今回の作戦で目星をつけたのは計8名。全員無事確保の報告を受けています。その他に怪しい動きをした者、逃げ出そうとした者はいませんでした。後は捕縛した容疑者に聞くしかないかと。
色々と騒がしくしたうえ、一部宮内を破損させてしまったこと、申し訳ありません」
「いや、今回の作戦がなければいずれ事を起こされていただろう。その程度は構わない」
「そう言っていただけると幸いです」
「あぁ」
「……」
「……」
表面上の本題しか言われていないアイジスは、決してそれ以上しゃべらない。
たとえ分かりきっていたとしても、王の心中を勘ぐるのは不敬だからだ。
そんなアイジスに業を煮やしたウィルソンは、恥ずかしそうに、申し訳無さそうに、視線を外しながら小さく言った。
「…その、あいつはどうしている?」
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