三章 一歩

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…  人もまばらな詰所の廊下の角をまがった所で、クロノは足を止めた。 腕を引いていたギノアも、引っ張られるように足を止めてクロノを振り返る。 「先輩?大丈夫っすか?」 「―…ギノア」 「はひっ!?」 声をかけたギノアをクロノは何の前触れもなく抱きしめた。 背の高いギノアの胸にクロノが飛び込むような形になり、不意打ちにギノアは頬を染めてあたふたすることしかできない。 「あのっ、え!?先輩!?」 「……」 何も言わずにクロノはただギノアを抱きしめる腕に力を込める。 「クロノ先輩…」 触れた身体が微かに震えていることに気づいたギノアは、そっとクロノの背に手をまわす。 脆い、子供のような彼を支えるように、守るように、慈しむように。 何も知らずとも、何も語られずとも、今腕の中にいる大切な人が傷ついているのは確かで。 できることは少なくて、役になどたっていないかもしれない。 それでも不器用に、自分を頼り支えを求めてくれているならばと、ギノアは精一杯の思いを込めて震える身体を抱きしめる。 「大丈夫っすよ。俺はここにいますから」 「ギノア」 「はい」 「…ありがと」 「~~~~っ!!!!」 恥ずかしくなったのか頭をギノアの胸にぐりぐりと押し付けながらも、クロノは小さな声で言った。 その姿に、その言葉に、ギノアの心に愛しさが湧き上がって溢れ出す。 ギノアは想いをクロノに伝えたくてたまらなくなり、抱きしめる腕に力を込める。 「先輩好き!」 「はいはい」 「ちょ、雑!!!」
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