三章 一歩

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むすっと口を尖らせて拗ねるギノア。 それでもしばらく大人しく頭を撫でていると段々と口角が上がってくる様子に、クロノは堪らず小さく吹き出した。 「ちょ、なんすか!?」 「いや…っ、ぷっ、なんでも、ふはっ」 「なんでもなくないじゃないっすかぁ!」 いよいよ涙目になってきたギノアにさすがにクロノは笑うのを止める。 「悪かったって」 「む~、簡単には許さないっす」 「何が望みだよ?何でも聞いてやるから機嫌なおせ」 椅子の上で器用に体育座りをして小さくなるギノアに苦笑しながらクロノが聞くと、ぴくっとギノアが反応する。 体育座りをしたまま横目でクロノを見たギノアの目は、微かに細められていた。 「先輩、言ったっすね」 「……?」 「なんでもっすよ!絶対ですからね!」 「お、おう…出来る範囲内のことに限るけどな」 「それでいいっす!」 「何かやけにテンション高くないか?」 「気のせいです」 何にしようかとにこにこ、否、にやにやとも言える表情で考えているギノアに、クロノの背中を冷や汗が伝った。 もしかしたら、この後輩は食えない奴なのかもしれない。 一抹の不安がクロノの中に芽生えた。
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