三章 一歩

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「ギノア?今日はお休みだって聞いたよ?」 急かす人物のいないクロノはそれはもう堂々と遅刻をかまし、レイルに発見されて説教をされた後にそれを聞いた。 いつも小うるさく「遅刻ダメなるべく!」といっている奴が遅刻してくる様を悠々と眺めてやろうというクロノの願望は叶わなかったが、落胆してすぐに思考は前向きに切り替わった。 うるさいのがいないってことはサボリ放題なんじゃ…? そんなクロノの考えなどお見通しなレイルはにっこりと自分の手伝いを命じた。 目はまったく笑っていなかったが。 「そういえば、何でアイツ休みなんです?」 整理する書類を押し付けられながらクロノは疑問を口にした。 「さぁ…僕はアイジスに休むと連絡があったことしか知らなくてね。 あ、サインしてあるの確認したらそれ全部アイジスのとこに持っていってくれる?」 「はいはい…」 なるべくゆっくりと書類の確認をしながらクロノはギノアのことを考える。 いっつも朝っぱらから押しかけてくる奴が休みだからって俺を放置はしないよな…。 風邪とか…馬鹿だからひかないか。 直接連絡を受けたアイジスに聞くのが一番手っ取り早いと判断し、クロノは書類に意識を戻す。 だがそこはサボリ魔。 手っ取り早いからといってアイジスのもとに行く為に書類確認のペースを上げることはしなかった。
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