一章 裏切者の魔法使い

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宣言通りに書類から目を離さないままアイジスは話し始めた。 「用件は二つだ。まずはわかっているだろうが、クロノ。お前はギノアの教育係だというのに、毎日毎日ギノアを放り出して書架塔にこもっているそうじゃないか。あいつは素質は新人一だというのに、今のところ覚えたのはお前の捜索と仕事の邪魔だけ。頭が痛いぞ」 「いやぁ、どっちも俺は教えた覚えないんですけど、凄いですねー」 「お前が何も教えんからそんなことしかやれんだけだ。他の者は手一杯の状況だというのに、仕事をせん奴が二人もいては邪魔なんだがな?ん?」 「……以後気をつけます」 書類の山から覗く怒気のこもった眼光が、居心地の悪そうなクロノに刺さる。 視線から逃げるようにあらぬ方向を見つめるその顔は、言葉とは裏腹に涼しげだ。 「まったく……二つ目だが、研究室の奴らがお前の手を借りたいそうだ。どうせ時間は有り余っているのだろう?この後にでも顔を出して来い。よかったな、マトモな仕事が出来そうで」 「まったくですね……。あ、昼がまだなのでそれからでいいですか?」 「ふざけるなさっさと行け!」 有無を言わせぬ強烈なアイジスの咆哮に執務室を追い出されたクロノは、執務室の前で大人しく待っていたギノアを連れ立って、悠々と昼食をとりに魔法師団団員や騎士の利用する食堂へ向かった。 クロノが研究室についたのは、それから二時間後のことだった。
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