三章 一歩

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レイルの手伝いを始めてから数時間、クロノはまだアイジスを訪ねられていない。 原因はクロノの仕事が遅いから…だけではなかった。 レイルの仕事が次から次に増え、結果クロノの仕事量も増えたのだ。 先ほどからレイルあての書類を持ってきたり、用件を話しに来る団員が後を立たず、完全な人員不足を起こしていた。 塵も積もれば山となる。 すでにクロノにまわされる簡単な仕事も順番待ち状態だ。 とても一日では片付きそうも無い仕事量で、優先するよう言われたものから片付けていると、クロノの腹の虫が鳴く時間になってしまった。 「あぁ、すまないね。先に昼にしてきていいよ。僕はきりがいいところまでやってしまいたいから」 そう微笑みながら言ったレイルの手元は、まったく笑えない惨状だ。 後一歩で誰かさんの執務室のごとき書類の山を築きそうな勢いである。 「なんでこんなに仕事が多いんです?」 「昨日やれなかったから。僕は捕まえた団員と話したり、報告書を作ったり忙しくて。僕だってアイジスほどじゃないにしても多忙だからね」 「……何か成果あったんですか?」 「…うん。あったにはあった、かな」 「ハッキリしねぇ…」 思わず素で反応してしまったクロノに、レイルは申し訳無さそうに肩をすくめた。 「事が事だからね。まだ、一魔法師団団員には言えないってことだよ。ごめんね」 「……」
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