ベテルギウス

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 変わったやつだった。  その日の夜、僕はベッドから夜空を眺めていた。  オリオン座が、高い空から覆いかぶさるように、僕を見下ろしている。僕は、まばたきしないように気をつけて、左上のベテルギウス見ていた。 ***  例えば、掃除の時間に、短くなったチョークがないかこまめにチェックしている。 あれば黒板のチョーク入れに全て入れ、代わりに事務室から持ってきたきれいな新品のチョークを、黒板の溝に敷きつめる。きちんと色分けもして置いてあるから、先生には気に入られていた。  そして、こっそり短くなったチョークを持ち帰って、粉々にして、練って再びチョークを作ったり、絵の具に使ったりすることを楽しんでいた。    他にも、鼻水の詰まった喋り方をする生徒を見かけたら、「条件反射だ」とか言って、涙を流していた。  とにかくおかしなやつだった。  けれど僕は、いつからかこいつと友だちだった。  100円のハンバーガー2つだけで、いつまでもマックに入り浸ることができた。  歌は好きだけどうまくないからと嫌がる僕を、執拗にカラオケに誘った。    その日の帰り道、コンビニに寄ろうぜと誘われた。 「だめだよ、寄り道は。近所の人にチクられるよ」 「いいんだよ。先生にばれたら、風邪ひいた母さんのために風邪薬を買ってたとか言えば」  タカヒロは、ぺったんこの学生鞄をぶんぶん振り回して歩く。たいていの男子生徒は、「ダサい」という理由で黒革の手提げ鞄を使っていない。  しかしタカヒロのは、使い古した姉の手提げ鞄だ。 「コンビニで何買うの?」僕は飛び跳ねて、背中のリュックを背負い直す。汗で制服のシャツが背中に張りついていた。 「ジャンプ立ち読み」
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