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店内に入ると、ガラス窓に面した雑誌コーナーに直行するタカヒロ。
僕はなるべく端に寄って、外からは姿を見られないように立って読んだ。そんなに端に寄ったら、大人のコーナーで立ち読みしてるみたいじゃん、とタカヒロが笑う。
*
ついつい、読み込んでしまった。
店員がこちらを睨んでいるような気がして、僕はそろそろとジャンプを棚に戻す。毎週買うお金はない。
「あれ、タカヒロ?」
帰ろう、と言おうとして、となりを見るとタカヒロの姿はなかった。
反対側を振り返ると、レジの方から白い袋を下げて、タカヒロが歩いてくる。
「よし、帰ろうぜ」
「何買ったのさ?」
コンビニを出て僕が聞くと、タカヒロは歩きながらレジ袋の中身を取り出して、何かをよこした。
反射的に受け取ると、掌に軽いプラスチックのものが乗った。日曜の朝にテレビで放送している、ヒーローのフィギュアだった。
「えー、なんだよこれ」
「お前、それ好きなんだろ。あげるよ」
「はー?俺もう中2だぞ」
たしかに、僕は毎週、このヒーローの番組を見ている。かっこいいと思ってしまう自分を、恥ずかしく思いながら。
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