囁く星に、願いを

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囁く星に、願いを

 煌々と照りつける太陽の下で、黒い軍服に身を包んだ少女は、荒れ果てた山肌を歩いていた。遠くで男どもの咆哮が聞こえる。どうやら、戦いが始まったようだ。相当の数が動員されているらしく、地面がぶるぶると震えていた。  少女はそれを感じ取ると、足を早めた。しかし、乾燥し痩せ衰えた土は少女の小さな足を飲み込み、そのために少女は思うように先へ進むことができない。  少女がもたついているのは、それだけが理由ではない。彼女は――。 「……!」  少女がぴたりと動きを止めた。さっきまでの困惑の表情はどこかへ消え失せ、その貌には全く感情がない。  乾いた風が、寂れた山肌を舐めていく。  少女は、暗い闇の中にいくつもの気配が蠢くのを感じ取っていた。耳を聳たせ、肌を差すいくつもの殺気の出所を探った。 「……囲まれてしまいましたか」  静かに溢す。その瞬間、彼女の周囲に満ちていた殺気が一気に襲い掛かったのがわかった。空気の動きから、数人の男であることがわかる。そして、この洗練された連携から、男達が軍人であることも察することができた。 「こんな小娘が別動隊とはな!」  男の一人が叫んだ。     
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