第1章

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 彼なりに真面目に書いたつもりだ。どうして、気さくに少々説教垂れるようなことが、そして友達のように褒めたりすることが、ふざけてると言われるのか。  分からなかった。 「何言ってんだよ、こいつー」  まだ年端もいかない子供達だから仕方なかったのかもしれないといえば仕方なかったのかもしれない。  でも、Aくんは本当に意味が分からなかった。だから、退くなんてことはしなかった。 「え、じゃあ、きみはこういう聞き方しないの?」 「しねーよ」 「ほら」  Aくんは笑顔で語る。 「今、きみみたいに話しただけだよ、ぼく」  ね、と彼はそのまま先生にも顔を向ける。 「………」  先生は表情を崩さない。仏のような微笑みのままだ。 「……はい、それじゃAくん。次はちゃんとやってね。それじゃ、次は――」  え?  と、このときAくんにとって驚くべきことが起こったのだが、周りはそんなのおかまいなしに話を進めた。  何故だろうか。疑問に思ったが、だからといって、今手を挙げて聞こうとするのをためらってしまう。  何でだろう。  何で、僕の意味が分からない、は捨てられてしまったのだろう。まるで、ハエをはたき落とすように。  それから、段々とAくんは先生のことが苦手になりました。  002  全ての先生が、i先生のようだとは限りません。さらにいえば、i先生がいつもあのようなことをしていたかは不明です。たまたま、Aくんとi先生の相性が悪かっただけかもしれません。もしくは、相性自体は悪くなくてもあの出来事が原因だったのか。  いや、理由は何であれ。Aくんにとっては地獄でした。 「何でそんなことするの、Aくん!?」  学校のお昼休み。給食。  当番の子が配膳を行い、クラスの生徒が並んで給食をもらい受けたあと、それぞれ手を合わせていただきます、をしてすぐです。まるで、待ってましたと言わんばかりにi先生はAくんの手を取りました。彼の手から、牛乳パックがこぼれます。 「どうして、Bちゃんの牛乳を盗っちゃうの? ダメじゃない、女の子をいじめちゃ!」  と、口調は優しい方ですが、先生は強い調子でいいました。  Aくんは、またしても意味が分かりません。何でだろう。この人は、何でこんなことを言ってるのだろう。 「意味が分かりません」 「まぁ! どうしてそういうこというの!」先生はBちゃんを指差していいます。
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