第1章

4/10
前へ
/10ページ
次へ
 Bちゃんは、Aくんの向かいの席に座る女子生徒です。 「Bちゃんがくれるっていうから」 「くれるっていうからって、Bちゃんが本心で言ったか分からないでしょう」Aくんは疑問符を大量生産します。「Aくんが、くれくれ、とせがむからイヤイヤ渡したんじゃないの?」 「違います」 「そんなの、きみが言うことじゃないでしょう!」  Aくんは意味が分かりませんでした。  Bちゃんは、以前から牛乳が苦手だったのです。だから、誰かに牛乳をあげることが多く、それを以前から先生も見ていたはずです。そして、今日はたまたまAくんがもらった。Aくんは真向かいの席なのに、今まで「ちょうだい」と言わなかったのですが、今日はたまたま牛乳が欲しかったので、「ちょうだい」と言ったのです。  まさか、こうなるとは思いませんでした。 「女の子から無理やりもらうなんて、ダメよ、Aくん? そんなの、悪い子がすることなのよ?」 先生はみんなに聞こえるように大きな声で言います。 「Aくんは、そんな悪い子なの?」  003  それ以降、Aくんはみんなから悪い子と認定されました。  そもそも、彼らはまだ年端もいかない子供。何が悪いか悪くないかもはっきりしてない純粋無垢であるが故に、温和で優しい先生が厳しく注意したことにより、Aくんがダメな悪い子に見えたようです。  とくに、女子をいじめたというのは、彼らの中でAくんを嫌悪する何かを芽生えさせたそうです。単純にそんなことする子は嫌いという感覚だけじゃなく、この日本社会で本能に結び付けられた道徳的概念、【どうしてそんなこと出来るか分からない】もあるのかもしれません。それが、まだ年端もいかない子供達にも引火し、Aくんは卑怯で下劣な最低野郎とレッテルを貼られたようでした。  Aくんのクラスは、というかこの学校では、男子と女子は隣同士で並びます。微妙な年頃故か、男子は女子とくっつけたくない、女子は男子とくっつきたくないと、大抵どこも机に距離があるのですが。  Aくんはとくに離されていました。  他の子がお約束のように机を離す距離とは違って、大分距離が離れてます。人一人が軽く通れるくらい離れ、座席の列が乱れるくらいに。 「どうして、Aくんはできないのかなぁ」  i先生はそれを注意しません。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加