第1章

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 ときおり、二ヒヒ、と笑う男子達がAくんの背中にセロテープで【ごうだつはん】と書かれた紙を貼ったり、それも注意しませんし、いえ、貼った者達もバレそうになるとすぐはがすからなんですけど。 「………」  このとき、Aくんは何となくですが、背中に何か貼られてるなという感覚がありました。でも、反抗しません。 (ふりむいたって、はろうとしてないよー、で終わりだもんね……)  そして、スパイゲームでも楽しむかのように、自分に気付かれず紙を貼るのを楽しむのだ。  Aくんは、辛いとは思いませんでした。 (でも、ぼくが悪いんだもんな……)  ぼくは、悪い子だから。  辛いとは、思っていませんでした。自覚してないのです。  だって、この苦しみは悪い子の僕がいけないんだから、と。  004  Aくんは誰かに相談することもできませんでした。クラスに友達はいないし、相談するはずの教師が悩みごとの原因だし、と。  親にも話せません。  先生から悪い子と言われてる。それも、女の子をいじめるような最低な奴と言われてる、と。そんなこと言えるわけありません。  正確には先生はそこまで言ってないのですが、いつのまにかクラスメイトが言ってることが混ざり、i先生に集約されてるようです。  Aくんが唯一、心を落ち着かせられるのは愛犬のライカでした。  小さな芝犬で、毛は茶色。散歩に連れ出すと、しっぽを振って舌を出し、うれしそうにてくてく歩く。 「それでさ。ぼくはがんばってるつもりなんだけどさ。先生がね」  彼にとって、ライカだけが悩みを相談できる相手でした。  この物語は彼をどん底に落とすだけが目的の物語ではないため、このライカが死ぬという展開はありません。むしろ、彼の前に理解者が現れます。 「あっ」 「……あ」  それは、Bさんでした。  給食のとき、Aくんの真向かいの席だった女の子――というか、Aくんの隣の席にいる女の子です。  彼に牛乳をあげた女の子。今は、彼と席を大分離れさせて距離を取る子。 「………」  ふと、Aくんは何か妙なものが芽生えましたが、それを抑え込み、さっさと行こうとしました。 「ごめんなさい」  でも、袖を引っ張るようにBさんの言葉が放たれます。 「……え?」 「わたしのせいで。Aくん、みんなにきらわれて」  005  どうやら、bさんは内心罪悪感を抱いていたそうです。
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