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桜の花びらが散る時
桜の花びらが散る季節になるたびに思い出すあの日のこと。
恐る恐る玄関のドアを開けると、その日は春一番で、アパートの前に咲いていた桜の花びらが一気に部屋に吸い込まれるように入っていく。
「お義父さん……」
床には包丁で胸を一突きで殺されている義理の父の遺体があった。
殺されている遺体なんてみたら怖くて腰を抜かすものだと思った。
でも意外にも怖くなかった。
だって桜の花びらが遺体が見えないぐらいたくさん包み込んでくれていたから――。
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