本篇

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 まぁ、よく考えればこんなものだろう。  こいつらの話が真実であると仮定しても、転生先の魂が前世の記憶は持っていたところで身体は所詮、現代人のそれであり、そして身体能力を発揮するにはやはり訓練と実践、経験が必要であり、例え知識があったところで、どうしようもないものである。  ラノベやアニメのように都合良くは行かないのが現実というもので、そもそも、そんな転生などと言うものが所詮は妄想でしかないというのも事実であり、即ち俺が今目撃しているものは単なる喧嘩、最悪は殺人事件に発展しかねないと云うことになる……  空間から剣を取りだした事など、説明の付かない現象も起きてはいたのだが、目の前の戦いを見ていたら、そんなことは些細な問題のような気がしてきた。  そうこうしている間にも、戦いは続いていた。  少女は逆手に持ち替えたナイフに左手を添え、転んでしゃがんだままの男に向け、頭上から何度も繰り返し、「えいっえいっ」と振り下ろす。迎え撃つ側の次郎は次郎で、「ひ、ひぃっ!!」と、先程までの姿からは想像も出来ないような甲高い悲鳴を上げながら、マントを引きずり這々の体で後退りを続けるのが精一杯のようだ。  それでも、次郎は何とか反撃しようと、右手で短剣を振り回し、アリアのナイフを受け流そうとするのだが……
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