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「ひぎゃあぁぁぁぁ―――!?」
突然絶叫したのは、次郎である。彼の手にアリアのナイフが擦り、流れ出た血を見て仰天したのだ。
ところが、である
「きぃゃあぁぁぁぁ―――!!」
その絶好の機会に、アリアもまた悲鳴を上げ、その場から飛び退いていた。何のことはない。彼女もまた、男の悲鳴に驚いたのだ。
アリアからの猛攻(?)が止んだ隙に、男はあたふたとマントを脱ぎ捨て、Tシャツとデニムという、意外にも一般的な服装になってその場から逃亡を図るも、方向を見誤ったのか、店舗側に走り、そのまま空き缶袋の山に突っ込んでしまう。
それを見たアリアもアリアで、
「待て、このやろー!」
などと、清楚なJKのイメージをかなぐり捨ててナイフを振り回しながら追いかけるのだから、もう目も当てられない。
だが、ここでアリアは不意に飛んできた小さな何かに当たり、腕で顔を庇いつつ、その場に立ち止まる。
それは、次郎の反撃だった。この男はゴミ袋から空き缶を取り出し、それを次々と、矢継ぎ早に、アリアに向けて投げつけてきたのだ。流石に少女は堪えたのか、今度は彼女が逃げる番だった。
「……調子こいてんじゃねえぞ、このアマ!」
次郎は再び立ち上がり、袋がカラになるまで、声なき悲鳴を上げ続ける少女に向けて空き缶を何度も投げつける。
そして、最後の一つが少女の右手に命中することでナイフを弾き飛ばしてしまう。
それは近くのビールケースに刺さった。
「へっへっへ……じっくりいたぶってやろうじゃないの、ぇえ!?」
もう、初めて見たときの印象はマントと共に脱ぎ去ってしまったようだ。
もはやチンピラそのものと化した次郎は、折角の美形を憎悪で歪め、アリアを威圧するかのように、手にした短剣の刃をべろべろと舐め回す。こうなると、小者臭しかしない。
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