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なくした物の大きさは、なくす前からわかっていた。私の人生に膨大に関わり、けれど見かけ上は全く大した問題にもならず、物質的にも何も変化をおこさない。
私と彼は、絶対に衝突しない惑星同士の様だった。
彼は私のものではないし、私は彼のものではない。私達は、物凄くおぼつかなかった。けれど外から見たら、私達はごく普通の恋人だった。
本当は何か普通でなかった。
ある日私達は高原で寝そべっていた。2人きり。なぜか2人きり。公立の公園内で、夢の様だった。
そうしたら、空から何か龍神の様な物が舞って、それは私達に近づいて、すこしずつすこしずつ、大きくなってきた。列車だ。
彼は私の手を握って、いこう!と言った。
銀河にいける。私はそう思った。
私達は銀河を旅した。それはとても楽しくて、景色はとても美しくて、漆黒の宇宙は星がちりばめられ、闇ではなかった。
私はふと目をあけた。
そうだ。彼はいないんだ。彼をもう2度と見ることはできない。
彼は結婚したから。他のひとのものになったから。
彼のフィアンセは彼に愛されていた。
では私は?
彼は私の事も愛していた。彼が私を抱くとき、私達は幸せの頂天にいるはずだった。私にはむずかしかった。 私は、彼のものではない。
彼の逆らえない人生によって彼は彼の家族の決めたうつくしいフィアンセと結婚した。
彼はずるくない。
夜空に願う、宇宙に問う。
彼が本当に幸福な事。私の喜びが見つかる事。
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