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4. 咬舌
深夜、林間の闇に溶け込む合宿所の室内。
妻と娘の寝息に耳を澄ましていると、ミュートした携帯の画面が明々と輝いた。突然の眩しさに目を細めながら、画面を確認する。
1コールだけの着信。公衆電話だった。敷地内のどこかから掛けたのだろう。
着信履歴を操作して消去。妻と子供の寝顔を視界に収めながら室内をゆっくりと移動して、引き戸をそっと開く。廊下に人影はないが、扉の外でしばらく佇んでいた。
胸の内に巣食う想いが緊張を呼び寄せて、頭が極度に冴え渡っている。
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