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3. 燻焔
金属製の火おこし器の中で、積み重なった炭塊が赤々と揺れている。
両家の妻の指示の下、危なげな手つきで包丁を操って食材を刻む子供達。瀬尾はどこで油を売っているのか、魚釣りからまだ戻っていない。
いつものことだが、火おこしはオレの役割となる。だが、一人で静かに取り組むこの作業は性に合っているらしく、特に不満はない。
チャッカマンで火をつけた煙草をくゆらせながら、長い柄の火バサミで炭を掻き回す。そろそろ良い具合に焼けてきた。
いくつか掴み出して鉄板の上に乗せると、ワイワイと賑やかなバーベキューサイトへ向かう。三方を耐火レンガで囲まれたバーベキューコンロの中央に、焼けた炭を設置する。
「ありがとうございます」と小さく告げる、瀬尾の奥さんの声が耳に残った。
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