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食事の後は、これまた毎年恒例の花火大会。
子供達が小さかった頃には花火を振り回して火傷しないか冷や冷やしたものだが、彼らもいまや高校生だ。
暗闇の中で二人が思い思いに点火する色とりどりの輝きを見守りながら、女性陣は食器の後片付け、オレと瀬尾は炭の後処理を担当する。
「なぁ、お前のところはその…… どうなんだ?」
「どうって、なにが。仕事か?」
「いや、まぁ、仕事もそうだけどな……」
「? なんだよ、瀬尾。お前らしくない。はっきり言え」
「もうすぐ子供も大学だ。家を出て行くだろ」
「あぁ、志望校に受かったらの話だけどな」
「そうしたら、ほら、家にアイツと二人になる」
「まぁ、そうだな」
「こんなこと言うとあれなんだが、仕事ばかりして来たから、オレ」
「……あぁ」
「ふと気付いてみれば…… アイツが何考えてるのか、全然わからないんだ」
水を張った金属製のバケツに、火バサミで掴んだ黒炭を一つずつ沈めていく。次々と水蒸気の断末魔を上げる、紅い焔。
オレの中に燻る焔もこんな風に殺せたら楽なのにな、瀬尾……
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