記憶の無い七面鳥

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「ウオ~!」  俺が相も変わらずスナック呑我等(ドンガラ)で歌っていた時の話だ。  35にもなって女もいず、つまらん仕事をしながら、夜になればスナック、居酒屋。 たまにゃ~、風俗と言う、 親にゃ見せられない毎日を送っていた。  いやいや、毎日は飲みに出てないぜ。 夜勤もあるからねぇ。  そんな俺の回りが何だかちょいちょい、 煩くなって来やがった。  居酒屋に行くと変な男共に、つけられてる気がするし。この店のカウンター席にも、居る様ないない様な。  一体俺が何をしたって言うんだよ。 薬(ヤク)の売人と間違われているのかな? 俺はとりとめも無くそんな事を思っていた。  酔っているからさ。 人恋しさがそんな気分にさせるのかも、 知れないのさ。 まあ、酒飲んで酔っぱらえれば良いのさ、 俺の人生、あはは! 「下手くそ!歌うな~!」 「えっ、ひでぇ~な、あんたもえろなったねぇ」  俺は暴言を吐くチイママの美加にそう言った。何とお客様の俺のカラオケに強制停止を かけやがった。  あはは、そんなに下手かねぇ? 「では、森木さん他の方も歌いたいので、 暫く御待ちください」 と事務的な美加。 「ああ、良いよ、何曲待ち?」 と無視する美加の前にあるモニターを見ると、17曲待ちとあった。  あっちゃ~、店終わる。 俺は歌うのを諦めて、団体さんにマイクを譲った。するってぇと、隣に座っていたサラリーマンが話し掛けて来た。 「酷いですよね、私なんか1曲も歌っていない」 とセットのつまみを食っていた。  あはは、御同様か。 ああ、つまんねぇこの店。他に行こうかなぁ。でも、知らないし。 この年で、新規開拓はつれぇなぁ~。  俺はそんな事を思い酒は程々にして、 風俗でも行くかと財布を覗いた。
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