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私は歩み寄って行き、声をかけた。
「結衣ちゃんが一生懸命お願いしていたのに…、ゴメンね、お姉ちゃんたちが
力になれなくて…」
私に気がついた結衣ちゃんは首を振った。手に何か持っていることに気がついた。
「何それ?」
私が尋ねると結衣ちゃんはそれを私の方にかざして見せてくれた。
それは見知らぬ男性と赤ちゃんを抱いた久美子さんの写真だった。
久美子さんがまだ若いため、赤ちゃんは結衣ちゃんだろう。
「この男の人は誰なの?」
「パパだよ」
「パパ!?」
結衣ちゃんは空を見上げて一際輝く星を指差して言った。
「あのおホシさまになったって、ママがおしえてくれた」
「えっ、隆さんがパパじゃないの?」
すると結衣ちゃんは目に涙を溜めて言った。
「あいつはいつもママやユイにひどいことするだけ」
結衣ちゃんはパンツの裾を捲くって足を見せた。昨日見た腕と同じようなあざや
火傷の痕があった。恐らく結衣ちゃんの全身にこれがあるのだ。
幼い子供にこんなことをするなんて…。
「ママはユイをかばって、もっとひどいんだ」
二人が長袖にパンツスタイルである理由がようやくわかった。
恐らく久美子さんの頬にあったあざも隆さんの仕業だろう。
「だからここでパパにおねがいしてたの」
私に顔を向けると、少し笑みを浮かべて結衣ちゃんは言った。
「ママとユイのために、あいつをころしてって」
【終】
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